こうの史代:長い道

長い道 (Action comics)

長い道 (Action comics)

無職で気分屋で浪費癖があり,おまけに女好きな壮介と、そんな壮介を何時も何も考えていないかのような笑顔で迎える妻・道との奇妙な結婚生活をほのぼのとした調子で描いた短編集なのだけれど、印象に残るのはむしろ道の笑顔の裏側から時々垣間見られる誰とも通じ合っていない孤独や寂しさでした。そしteそんな内心等何も気にはしていないかのように明るく朗らかに綴られてゆく日常からは切ないけれど暖かさを感じられる、そんな恋愛漫画といったところでしょうか。

壮介は道の事など頭には無い様子で、道にも他に好きな男性がいる。二人の関係は、道の実家から、道へ見合いの話と共に離婚届が送られてくるエピソードが有るのだが、その時の二人はそれが全く自然な日常の光景であるかのように笑顔で別れの挨拶を交しただけで済ませてしまう程、薄く、奇妙なものなのだけれど、そんな関係が読者にとって居心地の悪い場所なのかというと全然そんな事はなく、最終話で壮介が道に少しだけいい事を云うに至るまでの二人の関係のゆっくりとした長い道のりを進む歩みをずっと観つづけていたいと思わせるように描いてみせるが作者の魅力なのだと思います。読後感がとても心地よい作品です。構図やコマ運びも含めて漫画を描くのが上手いなぁとも思いますし。お勧め。
★★★★☆