アーモンド入りチョコレートのワルツ

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

それぞれがクラシック音楽をモチーフにした3つの作品からなる短編集。
どんなに確かで変らない失いたくないと思っていた時間場所も、ほんの些細な齟齬から一瞬の内に失われてしまう事、そしてそんな事にも気付かないでいた自分の幼さを知ってしまった少年少女達の痛みとそれから先の未来を描いた三作品。自分の前から失われてしまったものとそれでも尚自分の側に確かに有るものの対比が鮮やかで、そこに自分自身ですらも何時までも同じではありえない成長期の少年少女達の肖像を重ね合わせた物語からは限りなく切なさを誘われます。少年少女達の心の持ち様についての著者の眼差しの鋭さと優しさには感心するばかりですね。

私事ですけど「彼女のアリア」なんかは割と見に覚えのある事で、ラストシーン等は嘗ての自分の可能性について考えさせられてしまってしんみりとしてみたりしてます。
評価:★★★★★