いつかパラソルの下で

いつかパラソルの下で

いつかパラソルの下で

「アーモンド入りチョコレートのワルツ」が面白かったので、発売直後に購入して積んでいたこの作品も勢いで読破しました。
厳格な父親の事を負い目と思って育ってきた兄妹三人が、その父がなくなる直前に若い女と浮気をしていた事を知った事から、父親のルーツを探りに父の故郷佐渡まで出かけるという話なのだけれど、佐渡に到着してからの、肩肘を張って憂鬱な気分で出かけた主人公達の予想や期待とは裏腹な肩透かしな(というか脱力)出来事の頻発、そして意外な父親の姿と時の流れに埋もれてしまった記憶と足跡に直面させられながら佐渡を回るうちに変化してゆく兄妹達の心境、当初の目的などどこ吹く風といった具合に一晩のみ明かした後に腹一杯にイカを食べこんで海に吐き流す所の描写がとても清清しい。
結局誰かを認める事というのはそういう事なのだろうというラストはとても爽やかな締め。読むと無性にどこかに無目的な旅に出かけたくなるという旅行小説的な意味でとても楽しめました。
評価:★★★★