三宅乱丈:王様ランチ

王様ランチ (F×COMICS)

王様ランチ (F×COMICS)

三宅乱丈の初の短編集・・・らしい。個人的にはこの人は天才だと思っているのだけれど、そんな身勝手な期待を全く裏切らない一冊でしした。
この短編集に登場する人物達は物の見事なまでの格破綻者揃いでで他人には理解し難い拘りを持っている。それは表題作の「王様ランチ」での幼児期に祖母から食べ物を無理やりに口に詰め込まされて食事を取らされた経験が病みつきになって、食べ物を顔にぶちまけられる事に快感感を覚えしまいには従兄弟や近所のケーキ屋の娘を巻き込んで更なる快楽の高みを目指す主人公だったり、「ある日突然超能力者」はもし、自分が超能力者になったなら・・・という仮定を延々と続けている女子高生だったりするのだけれど、それらの活き活きとした変人達の描きだしっぷりには、よくもまぁこれだけの変態の引出しがあるものだと感心しさえもSぎますし、登場人物達の行動が示す日常への懐疑には何処か底の知れない恐ろしさを感じさせる所に非凡さも感じます。その一方で、馬鹿に徹した作品ではとことん馬鹿なノリで押し通す芸風の広さもたまらない魅力だったりもします。こういう作品を読むと笑いとホラーというものは突き詰めるとどこかで通じる部分ががあったりもするのだろうか、と考えてしまいます。
★★★☆