世界最高の日本文学 こんなにすごい小説があった (光文社新書)

世界最高の日本文学 こんなにすごい小説があった (光文社新書)


著者は本職はドイツ文学者では有るが、世間的には音楽評論家としての顔の方がずっと有名だと思う。音楽関連の著書・共著の数はかなりの数にのぼり、敵を作る事も意に介さないような舌鋒の鋭さと、時には下世話な内容も交えた平易な語り口で人気を得ているのだが、その姿勢は扱うジャンルを日本の文学作品に移し三島や鏡花、谷崎といった錚々たる作家の作品を前にしても変らない。作品に突っ込みをいれつつ、古典と言えども堅苦しくならずに現代の娯楽小説と同様の楽しみどころが有るのだと提示しつつも、作品の本質的部分に関しては締めるべき所はきちんと締めている・・・ように思われる。


しかしここで問題が。最後に「ように思われ」と書いたように、自分はこの著書で取り上げられた本に関しては殆どが未読なのである。はっきりいって既読は「外科室」だけ。案内書・入門書として記されているのだから、自分のような人間が読む事こそ本書の目的にかなっているのだが、未読本についての解説だけを読んでも、面白おかしく書かれている紹介が真に正しい物かどうかについては判断の仕様が無い訳でストレスが溜まってどうにももどかしい気分になります。それを解消するためには、何をすればよいのか・・・という所まで考えさせられるという意味でもこの本は面白かったと思う。


それはそうと、若いうちに古典を読んでおくべきという事はよく言われる事だけれど、言うは易しというべきか、それを実践できなかった事に忸怩たる想いを抱かされる事を最近とみに感じさせられています。