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- 作者: こうの史代
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/03/11
- メディア: コミック
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この言葉だけでも自分の感情の襞がくすぶられるのを感じてしまうこうの史代の最新作です。
妻に先だたれて落ち込んでいた参さんが、馬の合わない息子や全く可愛げのない孫娘(生意気だけど憎めない所もある、という無難なキャラクターでは全然ない所が凄い!)がと同居する事から始まったホームコメディです。
去年刊行された「長い道」や「一昨年の「夕凪の街〜」もそうなのだけれど、「桜の国」においての「桜の国」、「長い道」では道さんの片思い、この「さんさん碌」では生前に参さんが知る事のなかった妻の書きとめていたノートとそこに込められた愛情、といった漫画の前面には出てこない、漫背景にあるドラマや感情といったものの存在が、時には鮮烈に、時には優しく登場人物達の生きる現在を照らして、それが何気ないはずの日常をとても幸せでそして少しだけ寂しいものとしているんですよね。
「人は誰かの為にに泣くのではない、ただその人と自分の思い出の為に泣くのである」という言葉(かなりうろ覚えです。出典は小説のような気もするのですが、ちょっと思い出せない)が思い出されてしまいます。読者としての自分、と登場人物との間で共有している想いでという意味でね。読んでいてとても気持ちの良い作品です。
★★★★