カストラートの世界

カストラートの世界

現在では存在しない歌手ー変声期前の少年を去勢する行為の問題ーカストラートの誕生と彼等が活躍し必要とされ、そして消えていった時代背景と、歴史に名前を残すカストラート歌手達の列伝が載せられています。時代が生み出した一つの徒花ともいえる彼らの存在の奇形ぶりを通して、近世から近代に移り変わる社会や音楽の変遷が読みとれる。良書。子供向けに書かれた本で、ちょっと読み辛い所も有るんだけれど大人が読んでも十分面白いです。J.S.バッハシューマン等6人の作曲家の人となりを紹介しているんだけれど、子供向けだからと道徳的な偉人伝、それこそベートーヴェンじゃないけど苦難を乗り越えての歓喜的な物語ではなくて、作曲家なんてろくな人間じゃないんだよ、とでもいいたげな(事実ですが)駄目エピソードをこれでもかとばかりに軽い調子で紹介しているんですよね。ブラームスヤマアラシのジレンマ、特に女性に対してのエピソードも臆面もなく晒していたりと、自分のイメージの中の子供向け本の範疇は超えているなぁとも思うのですが100年以上昔に死んだ人間に親近感を持たせるという意味では正解だとも思います。流石にワーグナーのようにマジでヤバイ人の事は紹介されていませんが、続編なんてものがあったら是非取り上げて欲しい(笑)

★★★★

究極の勝利 ULTIMATE CRUSH

究極の勝利 ULTIMATE CRUSH

上に書いた苦難を乗り越えての歓喜じゃぁないけれども、典型的なサクセスストーリー物で、面白みは感じない。印象としては予定調和的なハッピーエンドには決して収まらない存在や人間・集団の心理を切り捨てた大本営発表、もしくは官選の歴史といった所かな。本書で切り捨てられた物、ディテールを追求されなかったものの存在に目を向け逃げない事が、知性と度量なんじゃないかなと自分のような愚民は思うわけで。
★☆
古代の蝦夷と城柵 (歴史文化ライブラリー)

古代の蝦夷と城柵 (歴史文化ライブラリー)