屋久島ジュウソウ

屋久島ジュウソウ

直木賞受賞記念、という訳でもありませんが森絵都のエッセイを読みました。前半部が屋久島での山登り、後半部は雑誌連載された旅に関するあれこれを収録したものです。

屋久島行きは新たな刺激を求めてのものというよりも同行者編集者たちとのアットホーム的なやりとりを軸として描かれており、特にこれといった発見なり刺激なりを受けることはなかったのだけれど、旅の仲間である3人の編集者の作家を気持ちよく仕事をさせるための気の使いようは、という事は短い描写ながらもそこかしかから伝わってきました。その辺の製作上の内輪話のめいた事をいやみなく書けるのは強みなのかなぁ、とは思ったかな。

ペンギン、日本人と出会う

ペンギン、日本人と出会う

★★★★
ペンギン大好き! (とんぼの本)

ペンギン大好き! (とんぼの本)

ペンギン大陸

ペンギン大陸

ペンギンガイドブック

ペンギンガイドブック

人は誰しも一生に一度はペンギンの本をまとめて読んでみたくなるのはいうまでもない事なのですが、スタイルは異なれどもどれも非常に満足度の高い読書となりました。特に、「ペンギン、日本人と出会う」は本来的には出会うことのなかったペンギンと日本人の出会いの偶然と、その結果としての世界に冠たるペンギン愛を誇るらしい日本人との歩みをかつての捕鯨船員や動物園の飼育担当者への取材を通して描き出してみせている良質のルポ。東京の街中に個人の飼い鳥として連れて来られたペンギンの写真からは野生の保護だとか人間と自然の境界といったものを殊更等意識させないというような、正しさではない大らかさというものを感じて、それほど古い写真でもなにのだけれど、とても懐かしくてそして遠い感じがするという意味でのインパクトがあった。