死神の精度

死神の精度

かなり長い事積み本にしていた訳ですが・・・正直絶望した!これを積んでいた自分の至らなさに!


特定の人間の生死の判定をするために、対象となる人間に接触する事になりながらも人間達の喜怒哀楽を他人事として、不思議な物として接する死神のキャラクターの存在がかなり効いてます。

その死神が様々なシチュエーションに放り込まれるのだけれど、例えば「吹雪に死神」では、吹雪で閉鎖された山荘に連続殺人事件、そして死神という設定自体がまず笑える。他にも恋愛物だったり、任侠物だったり、ロードムービーだったり(笑)と舞台の設定が一々面白い。そして「死神対老女」では締めくくりとして、そう来るのかよ、と思わせる巧いオチを用意しているのは流石は伊坂、といった所だろうね。


死神と死神に見定められる人間が向かう死に至るまでの数日間(助かる人間もいますが)が描かれているだけに、そこには様々な人間模様の不確かさや不条理といったものが有るのだけれど、人の生死の判定(それも大抵は「死」)を仕事として淡々と処理する人の理の通じない死神を視点キャラクターに据えていうので、深刻にもウエットにも傾かず軽妙に話は進む、だけれどいや、だからなのだろうか、そこからはある種のすがすがしさややりきれなさというものがじわじわと沸いてくる。そういった所も上手い。
★★★★★