レコード芸術」誌で今に至るまで10年にも渡って連載されている名物企画の初めての単行本化。レコード、CDのジャケットに使用された名画とそれを描いた画家についての紹介なのだが、シューベルティアーデの一員であり、シューベルトを囲む集まりを絵に遺したシュヴィントや、趣味で描いていた風景画の存在が有名なメンデルスゾーンの様に音楽家との関わり(メンデルスゾーンは音楽家自身)が強調される人物もあれば、フリードリヒの様に、作品がCDのジャケットに頻繁に使用されるけれど音楽家との関わりが殆どない人物もいる。扱われている専らの問題としてはこの「ドイツ編」に関しては、近代の芸術運動や当時の芸術家の生活や精神の有り様について述べられている、といっていいだろう。中々に興味深い内容で面白く読めた。長期連載のそれも初期のものを収録した単行本だけに記憶から抜け落ちていたり、多分自分が読み飛ばしたのだろうと思われる記事も有って新鮮に感じた部分も大きかった、ように思う。


本刊は「ドイツ編」と有るが、出版に至るまでの経緯について著者の記述を読む限りでは、続刊についてはある程度以上の好評がなければ難しそうな印象を受けた。連載ではオールカラーでふんだんに名画やジャケットが紹介されている記事も、その出版事情で殆どがモノクロとなってしまったのはとても残念な事だと思う。