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ピアニストが見たピアニスト

ピアニストが見たピアニスト

リヒテルアルゲリッチ等6人のピアニストの人生と演奏スタイルの変遷とを解き明かしていく様は、名探偵の鮮やかな推理の披露にも似た物がある。若い頃からの演奏スタイルを捨ててストイックな程に技術至上主義を貫いたミケランジェリが最晩年になって嘗てのスタイルに回帰した話などは出来すぎだろう、と思える程美しく、そして残酷な物語になっているのだけれど、それを説得力を持たせているのは、豊富な資料と取材、そしてピアニストでもある著者自身の経験の裏づけがあってのものだと思う。自分のような人間には理解のしがたり所もある演奏技術に関しても、平易な言葉で理解した気になれたし、ピアニストとして観客や録音機材の前でピアノを弾きつづける生き方を選択する事の難しさという物について考えさせられる事が多かった。